フィンシステム進化の歴史とそれぞれのフィンセッティングの乗り味

EASTWAVE

サーフィンが好きすぎて海の前に移住。
サーフィン業界の仕事に関わる隙間に毎日のようにショートボードでサーフィンを楽しむライフスタイルを送る。
サーフィン歴は30年以上。

この記事はフィンシステムやフィンセッティングに関する記事です。

3つのフィンをセットするトラインフィンは誕生してから長年にわたりもっとも一般的なフィンセッティングでした。
今では4つのフィンを持つクアッドフィンセッティングで楽しむサーファーも増え、またオルタナティブボードのブームによりシングルフィンやツインフィンといったセッティングの楽しみ方も見直されて来ています。

サーフボードにおいてどのようにフィンセッティングの進化や変化が生まれて来たのか。
そして、シングルフィン・ツインフィン・クアッドフィンそれぞれのフィンの特性とフィーリングについて解説していきます。

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フィン進化の歴史

ツインフィンからトライフィンへのブーム

サーフボードのフィンは、ロングボード主流の時代からショートボードサーフィン黄金期を迎えるまでシングルフィンが採用されていました。

その後、オーストラリアのシェイパーでありトップアスリートでもあったマーク・リチャーズが自らデザインした2つのフィンで操るツインフィンセッティングで4度のワールドタイトルを獲得します。
この実績により、1970年代から80年代のコンペーシーンにおいて、ツインフィンがブームとなりました。

出典:RedBull PHOTO:Peter Boskovic

1980年代後半には、やはりオーストラリアのシェイパーでありワールドタイトルを争うトップアスリートでもあったサイモン・アンダーソンが現在のトライフィンとなるスラスターフィンデザインを開発。
サイモン・アンダーソンは自らが生み出したスラスターセッティングでいくつものワールドタイトルコンテストで結果を出し、その性能を立証しました。

出典:Surfing Walk of Fame PHOTO: Courtesy of Dan Merkel

その後多くのサーファーがスラスターのボードに乗り、現在にもおいても最も主流となるフィンセッティングとして多くのサーファーに愛用されています。

スラスターが生まれた経緯

70年代~80年代、数々のワールドタイトルを持つマーク・リチャーズをはじめ多くの選手は、ツインフィンを使用していました。
マーク・リチャーズが開発したツインフィンデザインは、シングルフィンに比べ、傾斜の強い波を駆け上がりやすいというメリットがあったのです。

そんな中、体が大きくパワフルなサーフィンを得意とするサイモン・アンダーソンは、
ツイン特有のテールが流れるルースな感覚を好きになれず、自分のライディングスタイルとの相性に不満を感じていたようです。
そこで自ら開発して生まれたのがスラスターデザインでした。

当時シングルフィンから派生したデザインとして、キャンベルブラザースによって開発されたサイドにキールフィンという大きめなフィンを装着した「ボンザー」や、サイドに小さなスタビライザーフィンを装着した2+1デザインがあります。
これらは1970年後半にはすでに開発されており、スラスターデザインのベースとなっていたのも面白い話です。

最近ではこういったデザインも、ミッドレングスやオルタナティブ系のサーフボードなどで見直され人気が高まっています。

ネオクアッドブーム到来!

そしてスラスターの次にブームになって、今やすっかり定着した感のある4フィンのクアッドセッティング。

トライでもクアッドでも楽しめるフィンシステムとして、5プラグ仕様モデルをリリースするサーフボードメーカーも多くなりました。
フィンのセッティングもサーフィンの楽しみ方のひとつとして主流になって来ていると言えます。

このクアッドである4フィンは、実は1980年代初めにはすでに存在していました。
当時のSURFIN LIFEなどの雑誌で見かけていたのを憶えています。
しかし当時の日本は、『時代はトライフィン全盛期に突入!』といった感じで、関心を寄せられることはありませんでした。

当時の4フィンは、レール側にフィンを寄せてセッティングするツインフィンに近い乗り味のデザインだったことも、ブームに至らなかった理由かもしれません。

しかし2007年辺りに、日本でもついにクアッドとして4フィンブームの兆しが到来します。

この新しい4フィンは、ツインフィン寄りのデザインではなく、トライのセンターフィンをふたつに分けた『トライフィン感覚で乗れる4フィン』というコンセプトでデザインされたネオクアッドと呼ばれるものになります。

バックフィンはボードのレール寄りではなく、比較的真ん中寄りにセッティングされているのが特徴です。
ネオクアッドが注目のきっかけとなったのは、シェイパーのコール・シムラーによりシェイプされるCOLEサーフボードがリリースしたことが一番早かったのではないかと思います。

ただ、その前からウィリアム・ストリッチ・リドルというシェイパーがすでにデザインしていたといった話も聞きます。
フィンメーカーからはクアッドフィンモデルとして、このストリッチデザインのクアッドフィンモデルを見かけます。

どっちが早いかはマニアックな話題として、今やフィンメーカーからは多くのクアッドモデルのフィンがリリースされており、多くのサーファーがこのネオクアッドセッティングでサーフィンを楽しむようになりました。

現在各サーフボードメーカーがリリースしているクアッドデザインのショートボードは、多くがネオクアッドデザインによるものです。

オルタナティブ系のボードやフィッシュボードなどの4フィンセッティングモデルでは、ツインフィンコンセプトにデザインされているボードが多いです。

同じ4フィンでもしっかりボードコンセプトも把握した上で、自分の求めるサーフィンスタイルに合ったクアッドボードをチョイスされると良いかと思います。

クアッドフィンの特性とフィーリング

クアッドフィンのイラスト

センターフィンがないクアッド。
トライフィンと違い、左右のフィンでガッチリ波を掴みボードコントロールするといった感じです。

ターンの際はどちらかの2つのフィンがガッチリ波をホールドしてくれるのでターンがしやすく、センターフィンが無い分レールの切り返しも素早く感じるところがメリットです。

センターフィンがないことで、トライフィンよりパドルでの駆動感やライディングでのドライブ感は少し劣ると思います。
またボトムターンから鋭角に波の斜面を駆け上がる能力も、トライフィンに比べると瞬発力は劣ってきます。
その反面、横方向へのアプローチは素早いです。

ライディングフィーリングとしては、センターフィンがない分テールの水抜けが良く、テイクオフでの滑り出しではテールを抜きやすく前に出しやすく、ファーストターンでは横へのアプローチが楽になります。
乗ってしまうと厚いパワーレスな波でもレールの切り返しが軽く感じ、横へと走りやすくスピードを得やすいです。
ターンの伸びの良さも優れています。
パワーレスで波質が柔らかいといったコンディションで、トライセッティングではどうも引っかかって走りづらい、なんて時には特にクアッドは最高に楽しめます。

パワーレスな波でも駆動よくドライブ重視なサーフィンならトライフィン。
軽快に横へのアプローチをイージーに、といった感じならクアッドがおすすめですね。
マルチなフィンセッティングに対応出来る5プラグ仕様のボードをお持ちなら、トライでもクアッドでも両方の感覚で楽しめるので、その日のコンディションや気分で楽しむのが良いでしょう。

シングルフィンの特性とフィーリング

シングルフィンのイラスト

シングルフィンは1本のフィンでコントロールするサーフボードです。
1本しかフィンがないので、トライやクアッドのようにフィンで駆動を得て加速をするのが難しいと言えます。
シングルフィンでスピードを得るには波の力や重力を使ったボード自身の走りを利用しなくてはなりません。

このような特性から、シングルフィンのサーフボードはフィンだけでなくボードの走りを利用したダウンザラインによるライン取りのサーフィンが必要になります。

ダウンザラインとは?

波の昇り降りを繰り返すことでスピードを得る、ボードを上下に走らせることがダウンザラインです。

またターンにおいても、やはりトライやクアッドのようにフィンでターンをする感覚が乏しくなります。
トライやクアッドはフィンを使い、テールを支点にノーズを浮かすようにボードを振りコントロールをすることが可能です。こういった動きで細かいアップスダウンができます。

しかしシングルフィンは、こういったフィンを使ったクイックな動きは難しくなります。
ダウンザラインで得たスピードを利用しながら、一本のフィンを支点にレールを使ったターンが出来ることが重要になります。

トライやクアッドのファーストターンはテールを支点にしたクイックなアプローチが簡単に行えますが、シングルフィンではトライやクアッドのように容易ではありません。
コツとしてはボードの走りと1本のフィンの感覚を感じながらレールをゆっくり入れてターンをしていく感じです。

この大きなラインのライディングフィーリングがシングルフィンならではの面白さであり、シングルフィンならではのマニューバーを表現できる魅力があります。

最近ではトライやクアッドでレベルアップしたサーファーが、あえてシングルフィンにチャレンジしてシングルフィン独特のフィーリングを楽しんでいます。
海でシングルフィンに乗っているサーファーをよく見かける理由の一つでしょう。

トライやクアッドでの正確なターンを再確認するにも、シングルフィンに乗ってみると良いと思います。
もしシングルフィンで思うようにターン出来なかったら、自分のトライやクアッドでのサーフィンがレールを使えておらず、どれだけフィンに依存しているか分かるきっかけにもなると思います。

ツインフィンの特性とフィーリング

ツインフィンのイラスト

ツインフィンは2つのフィンを左右のレール寄りに配置しているサーフボードです。
ボードの真ん中にフィンがないので、ドライブ性が弱く、テールがルースでターンフィーリングに優れたフィンセッティングです。

シングルフィン同様にダウンザラインでスピードを得て、レールを使ったターンも必要です。
ボードを走らせながらターンを繰り返し、スピードを得るといった感じが強いです。

なお、センターフィンがないので常にターンの際にフィンを波に食わせておかなければ失速しやすくなってしまいます。

この特性によりツインフィンのサーフボードは、波に食いつきやすいスワローテールやフィッシュテールを採用されているのを多く見かけます。

左右の2つのフィン、そして左右に先の尖ったテールによって、クイックに波を駆け上がることも容易になって来ます。
ただし、シングルフィンで得意とするドライブ性は、このツインフィンでは難しいところになって来ます。
ツインフィンでは、ドライブさせるためにレールを使ってターンを伸ばすテクニックも更に必要になってくるでしょう。
ツインフィンを乗りこなせるようになって来ると、このレールを使った伸びのあるターン感覚に魅了されるようになるでしょう。

まとめ

シングルフィン、ツインフィンの特性を見ても、トライやクアッドはそれぞれの利点を活かしたハイブリッドなセッティングです。
性能だけで見ればトライやクアッドはシングルやツインに勝っていますが、楽しむためのサーフィンではフィーリングも大切です。
そういう意味では必ずしもトライやクアッドがベストとは限らないかもしれません。
まだシングルやツインのボードに乗った事が無い方は試してみてはいかがでしょうか。

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