PUとEPSの素材の違い【サーフボードの基礎知識】

EASTWAVE

サーフィンが好きすぎて海の前に移住。
サーフィン業界の仕事に関わる隙間に毎日のようにショートボードでサーフィンを楽しむライフスタイルを送る。
サーフィン歴は30年以上。

サーフボードの素材で現在主流となるPUとEPS。
どのような特徴があり、どちらを選ぶべきなのか。

それぞれのメリットとデメリットの中から解説してみたいと思います。

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PUとEPSどちらが良いのか

どっちがいいのか?結論から言うと・・・

PUとEPSはどちらが良いということはなく好みです!

パワーレスなスモールウェーブでは、フレックスと反発感がスピードへと繋げやすいEPSには高いメリットを感じます。

ただしサイズあるコンディションやオフショアが強くせっかくチュービーなコンディションで、軽さによって中々前へと攻めづらいEPSはイライラする時もあり、そんな時は適度な重さのあるPUだな~なんて思います。

EPSは浮力、揚力、フレックス、反発といった特性による推進性の伸びを得られやすく、テイクオフの滑り出しや初速の伸びの良さもメリットになり、比較的浮力とレスポンスを利用したフロー(流れるような)なサーフィンに向いていると思えます。

しっかりとした太いラインでレールと波のボトムを使ったサーフィンを意識するならPUで練習した方が良いと思えます。

それではPUとEPSの違いを細かく見ていきましょう。

PU

PUとはポリウレタンの略になります。
PUブランクス(※1)はポリウレタンを発砲させて形成したものになります。

※1ブランクスとはサーフボードの芯材

PUを素材とするサーフボードは、PUブランクスをガラスクロスで包み、ポリエステル樹脂でラミネートして製造しています。

ナチュラルな浮力感・フレックス感・レスポンス感、またどんな波でも馴染みやすいオールラウンドな特徴が、長きに渡ってサーフボードのスタンダードな素材として使われています。
そして現在もコンペサーファーから一般サーファーの中でも主流とする不動な人気を得ている素材です。

PUはエポキシでもグラッシングできる

PUブランクスでは通常ポリエステル樹脂を使用しますが、強度重視で硬いフィーリングが好みの人はエポキシ樹脂でのグラッシングも可能です。

EPSブランクスは、ポリエステル樹脂を使用するとフォームが溶けてしまうため、エポキシ樹脂のみのグラッシングとなります。

EPSサーフボードの修理においても、エポキシ樹脂の材料がないからとポリエステル樹脂で修理してしまったら、フォームが溶けてしまうので絶対にNGです。

※グラッシングとはシェイプしたブランクスにガラスクロスを巻き樹脂でコーティングして仕上げるまでの工程のこと。

PUフォームの歴史

サーフボードは木材からバルサ材と進化を遂げ一般的となっていましたが、1960年代に入りポリウレタンフォームが開発され、今も主流となっています。

以前はクラークフォーム社のブランクスが世界シェアの90%を占めると言われるほど人気と需要を誇っていましたが、2005年にアメリカの環境保護庁(EPA)の基準に合わない成分がクラーク社のフォームに含まれているとされ、EPAから工場閉鎖の指示を受けることになりました。
世界シェアの90%を持つブランクスメーカーの急な廃業は業界的にも大きな衝撃となり、クラークショックと云われています。

その後クラーク社出身の熟練スタッフによって立ち上げられた、US BLANKSとARCTIC FOAM社がアメリカのハイクオリティーブランクスメーカーとして現在多くのシェアを占めています。

ARCTIC FOAM社のブランクス 出典:ARCTIC FOAM

PUのメリット

ナチュラルなコントロールフィーリング

サーフィンのライディングにおいて、浮力感、フレックス感、レスポンス(反発)感は乗りやすさとコントロール性に大変影響を与えます。

どれもが強すぎても弱すぎても良くなく、バランスの良いフィーリングを多くのサーファーは好みます。

PU素材のサーフボードは、浮力感・フレックス感・レスポンス(反発)感など様々なフィーリングにおいてトータルバランスに優れています。
どんな波のコンディションでも乗りやすくコントロールしやすいと人気を得られています。

風の影響を受けにくい

PU素材のサーフボードは適度な重さと適度な浮力により、オフショアが強い時でも風に煽られづらくボードを走らせ落としやすいといったメリットも人気なところと言えます。

施工性がよい

PUブランクスはシェイパーにとっても「シェイプがしやすい素材」と言われています。

シェイプ効率がとても高いうえに、ラミネートするポリエステル樹脂も硬化が早く、完成までの施工時間的にも効率がよい素材と言えます。

高いメンテナンス性

硬化しやすい特性から、ポリエステル樹脂を作りやすく、修理をするのも簡単であるためメンテナンス性の高さもメリットと言えます。

価格が安い

材料費、施工効率的にも比較的価格を抑えることができます。

PUのデメリット

凹みやすい・壊れやすい

PUサーフボードは、ポリエステル樹脂の特性上、比較的柔らかい仕上がりになります。
これがフレックス性をナチュラルにするメリットでもあるのですが、フットマークなど凹みやすく、また壊れやすいといったところはデメリットと言えます。

仕上げの重量が出る

ボードの大きさやラミネートによっては重量が重くなりがちです。

しかしこの重さをメリットとする場合もあるので、この辺は目的や感じ方で変わるところでしょう。

EPS

EPSとはエクスパンダブルポリスチレンの略です。

密集したビーズを発泡させて作られたフォームです。
EPSと聞くととても特殊な素材の印象を受けますがようするに発泡スチロールです。

EPSフォーム 出典:SURFERTODAY

PU同様にガラスクロスをエポキシ樹脂でラミネートして製造するサーフボードと、シェイプされたEPSフォームに何層ものエポキシ樹脂やPVC(塩化ビニール)素材の層で強化して製造されるものがあります。

モールドボードは既製品の中から選ぶしかありませんが、通常のラミネート仕上げのボードはオーダーも出来ます。

モールドボードとは?

モールドボードとは機械によってプレス・成形されたEPSのサーフボードです。
昔は廉価版的な位置づけで金型でプレスする様から「バッコンボード」「たい焼きボード」などと揶揄されていました。

現代のモールドボードは最先端のテクノロジーが取り入れられたハイテクボードとして進化を遂げています。

EPSはポリエステル樹脂が使えない

EPSブランクスは、ポリエステル樹脂を使用するとフォームが溶けてしまうため、エポキシ樹脂のみのグラッシングとなります。

EPSサーフボードの修理においても、エポキシ樹脂の材料がないからとポリエステル樹脂で修理してしまったら、フォームが溶けてしまうので絶対にNGです。

EPSのメリット

軽量化

EPS最大の特徴であり最もメリットとなりえる部分で軽量に仕上がります。
サーフボードの重量が軽量になることで、コントロール性がアップします。

高い浮力感

EPSフォームはPUより空気を多く含み軽量なため、高い浮力感を感じることになります。

従来からのEPSブランクスは密度も少なかったため、特に浮力の高さを感じましたが、新素材とする現在のEPSブランクスはPUのように密度が高くなっているため、以前のようなデメリットとされた強すぎる浮力感を感じることも無くなって来ています。

高い強度

エポキシ樹脂は硬化すると硬い表面になります。
そのため凹みづらい、壊れづらいといったメリットがあります。

筆者が使用する中でも、PUよりもフットマークの付き方が少なく感じています。

高い反発感

EPSは固い仕上がりになるため、PUに比べると硬いフィーリングのフレックス感になります。

しかし最近のEPS素材はフレックス性も考えられているので、EPSならではの優れたバネのように弾かれる感覚の反発が、ターンを伸ばすメリットに活かせるようになっています。

PUでは走り抜けられないといったセクションも、楽々走り抜けられるポテンシャルを感じられる場合があります。

以前のEPSでのデメリットとされた硬くてボードがしならず乗りづらいといったところも、最近のEPSブランクスでは改善されて来ています。

EPSのデメリット

風の影響を受けやすい

EPSの軽量さはメリットでもありデメリットでもあります。軽量がゆえオフショアが強すぎる時はPUに比べ、風に煽られ滑り出させづらい、スピードをつけづらいといったところは否めません。

価格が上がりやすい

EPSの材料はPUに比べ高価です。
EPSそのものがPU比べて高価であるうえに、EPS本来のデメリットを軽減させるためにカーボンストリップなど最新のテクノロジーとマテリアルを使用するため価格が高くなりがちです。

また、EPSの加工性の悪さゆえに作業工数がかかるといった点もコスト増加に起因しています。

カーボンストリップとは?

主にEPSサーフボードでフレックスやレスポンス調整をするために、ボトムやデッキのストリンガー部に入れるカーボンのテープのことです。

ストリンガーのあるブランクスでは、更なる反発感を高めることができ、ストリンガーレスのボードではフレックス調整には必須と云える素材になります。

メンテナンス性が低い

エポキシ樹脂は硬化剤の配分が正確でないと全く硬化しないといった難しさもあり、メンテナンスが困難でリペアのプロに任せることが多くなることもあり、コストがかかるといったところでしょうか。

黄ばみやすい

EPSのボードはエポキシ樹脂でグラッシングを行いますが、ポリエステル樹脂と比較してエポキシ樹脂は黄ばみやすい性質があります。

ただし、最近では紫外線をカットするエポキシ樹脂が使われるようになり、最近のEPSボードでは気にするところではなくなってきました。

とはいえ、紫外線には極力長時間当てないといったところは、どんなボードでも基本です。

またEPSは熱に弱いといったことも知っておくべきで、高温になる車に長時間放置しておくのも気を付けたいところです。

施工性が悪い

作業効率の悪さもデメリットと云えます。

シェイプもPUに比べ削りづらく時間を要し、エポキシ樹脂の硬化にも時間がかかり、完成までPUよりも納期を要します。

デメリットの薄まりを見せる昨今のEPS

以前のEPSボードは、何かとデメリットがあり、特にPUサーフボードを長年乗り慣れているサーファーにとっては敬遠されがちでした。

しかし最近の新たに開発されているMARKO FOAMJAVA FOAMといったブランクスは、切断面を見るとまるでPUのように密度が高く、ビーズ(発泡粒)が分からないくらいに高密度に作られています。

フレックス性もしっかり考慮されており、以前のような硬くてダメとか浮力が強すぎるといったデメリットはさほど感じることなく、普段乗るPU同等のボリュームでも快適に乗れるように進化しています。

ブランクス(フォーム)の種類

PU・EPSブランクスの通常ストリンガータイプ

ボードのセンターに木製やPVC(塩化ビニール)素材のストリンガーが入ったブランクス。
最もナチュラルなフレックスの乗り味で楽しめる素材と云えます。
強度も高く最も主流となっている素材です。

PVCストリンガーはウッドよりも更にしなやかなフレックスを感じられる素材となります。
カーボンストリップなどで更なるフレックス調整も可能。

ストリンガーレスタイプ

センターにストリンガーの入っていない素材。

ストリンガーの代わりにカーボンストリップで調整したり、レールにカーボンを入れてフレックス調整するタイプなどがあります。

ストリンガータイプのボードに乗っているサーファーにとっては、慣れが必要になるかもしれません。

EPSブランクスのPUストリンガータイプ

EPSボードのストリンガーの代わりに、硬質ポリウレタン素材のバーを挟み込んだ素材です。

ウッドストリンガーよりも軽量化され、PUストリンガーのフレックスが加わり、フレックスとレスポンス(反発)のバランスが良いとされています。

このままではフレックスがソフトなので、カーボンストリップでの調整も必要とされています。

まとめ

PUとEPSのメリットとデメリットをまとめてみましょう。

EPSのメリットとデメリット

PUのメリット

  • ナチュラルなコントロールフィーリング
  • 風の影響を受けにくい
  • 施工性がよい
  • 高いメンテナンス性
  • 価格が安い

PUのデメリット

  • 凹みやすい・壊れやすい
  • 仕上げの重量が出る
EPSのメリットとデメリット

EPSのメリット

  • 軽量
  • 高い浮力感
  • 高い強度
  • 高い反発力

EPSのデメリット

  • 風の影響を受けやすい
  • 価格が上がりやすい
  • メンテナンス性が低い
  • 黄ばみやすい
  • 施工性が悪い

EPSも進化をして来て以前のような極端なデメリットも感じづらくなってもいるので、自分の使い道やスタイルの中で好みの素材をチョイスされて楽しむことができるようになってきました。

コンテストサーファーの多くを見ても、パワーレスコンディションではEPS、グッドコンディションではPUと使い分けているようですよね。

ただボードを壊す機会が多い初心者や初級者などの方は、メンテナンスの面でもコストの面でもPUのサーフボードがおすすめかと思います。

あなたにピッタリのサーフボード探しの参考になれば幸いです。

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