サーフィンは自然の海をフィールドにするスポーツ。
そんな海の中には、サーファーにとって危険な生物も潜んでいます。
ここでは注意すべき海に生息する生物にはどんなものが居るか、またその対処方法について書いてみたいと思います。
もくじ
チンクイ
危険度 ★☆☆☆☆
チンクイとはエビやカニなどの甲殻類の幼生です。正式には『ゾエア』と言います。
大きさが2~3㎜ほどで半透明のため海の中ではほぼ目視するはできません。
とくに暖かくなり始めた時期くらいに多く発生します。
海に入っていてチクチクと妙な痒みが走り、肌を見ると赤くポツポツと発疹のような状態になっていたら、間違いなくチンクイに刺された(触れた)ことが原因でしょう。
クラゲに刺された時のようなはっきりとした痛みはありませんので、海に行きなれたサーファーは大して気には留めません。
掻きむしらなければ蚊やダニに咬まれた程度で収まりますが、掻きむしると飛び火して広がることがあります。
トランクスやウェットスーツの隙間から入りこんで刺してくる上に、刺された後も痒みが残るので大したことないといっても厄介です。
チンクイに刺された場合の対処法
海から上がり真水で患部をよく洗いましょう。
ひとまず患部を冷やし、その後ムヒなどの痒み止めを塗って様子を見て、症状が良くならない場合は皮膚科で診てもらうことがおすすめです。
チンクイの予防法
海に入ってよく痒みが出るといった人の場合は、夏場でも極力肌を出さずに、長袖のウェットスーツやラッシュガード、また隙間の少ないウェットスーツなどを着ると良いです。
ウニ
危険度 ★★☆☆☆
食べて美味しいウニですが、ウニのトゲはサーファーにとっては大変厄介なものとなります。
ウニを踏んでしまったりして刺さってしまった場合、皮膚の中に残ったトゲは抜こうとしても折れたり砕けて除去するのがとても厄介です。
取り除かなければ、慢性的な痛みや炎症を起こします。
リーフブーツを着用していても貫通して刺さることもあるのでサーファーにとってはとても厄介な生き物です。
ウニが刺さった場合の対処法
刺さってしまった場合は、ピンセットで細かく皮膚の中に分散したトゲを全て取り除きます。
少しでも残っているだけでも、違和感や痛みが残ります。
上手く取り除けたら、消毒液で消毒をしておき、可能であれば化膿止めも塗っておくとよいでしょう。
また、ウニの棘は酢に溶けます。とげが深く刺さっていなければ、酢に浸したり酢で湿らせたカーゼを貼ったりすることで棘を取り除くこともできます。
それでも取り除けなかったり、違和感や痛みが少しでも残っている時は、迷わず医療機関で診てもらうことをおすすめします。
ウニの予防法
リーフブーツを使用するのは勿論ですが、ピンセットや小さなナイフ、そして消毒液や化膿止めの軟膏などを持参しておくと安心です。
磯やサンゴ礁など砂浜でないところに生息しているので、土地勘のないリーフポイントや海外に行く場合はウニに注意が必要です。
クラゲ
日本近海にはたくさんの種類のクラゲが居ますが、その中でもサーファーが遭遇しやすい注意すべきクラゲはアンドンクラゲ、アカクラゲ、カツオノエボシ、ハブクラゲでしょう。
アンドンクラゲ
危険度 ★★★☆☆
夏場の九州・四国・本州の沿岸での遭遇率が高いアンドンクラゲ。
「お盆を過ぎたらクラゲが出る」とよく言われ、夏の楽しい海の思い出をビリッと痛いスパイスで仕上げてくれるニクい奴です。
体長3~3.5㎝の箱型の体に20㎝ほどの長さの触手が4本。
いわゆる電気クラゲの一種で、刺されるとビリッと激痛が走りミミズ腫れのようになります。
命にかかわるような重篤なケースはほとんどありませんが、遭遇率が高く夏の嫌われ者です。
体が透明のため至近距離でよく目を凝らして見ないと見えないのも厄介です。
その他にも日本近海に生息する刺されると痛いクラゲは沢山いますが、代表的なものとしてアカクラゲ、ハナガサクラゲ、カギノテクラゲなども刺されると非常に痛いです。
カツオノエボシ
危険度 ★★★★☆
こちらも「電気クラゲ」の一つ。
風船のようのな浮袋と鮮やかなブルーが特徴的で、2~3m の長い触手を持ち長いもので50mも達するものもいるとか。
泳力はほとんどなく、界面にプカプカ浮き風や潮に流されながら漂います。
クラゲとひとくくりにされていますが、正確にはクラゲではなく、ヒドロ虫の集合群体です。
刺されると電気ショックのように激しい激痛が走り、ミミズ腫れ、そして水疱ができ火傷のような跡になりやすく、アンドンクラゲなどとは比べ物にならない痛さだとよく言われます。
著者も刺されたことがありますが、知り合いのプロサーファーが胸付近を刺されてしまい、海の中で泡を吹いて気絶し周りのサーファーによって救助されたのを見たことがあります。
このように刺されるとショック状態になってしまうこともあり、パニックで溺れてしまったり、刺されたことでショック死した事例もあるようなので大変注意が必要なクラゲです。
ハブクラゲ
危険度 ★★★★☆
沖縄や奄美に生息する電気クラゲです。アンドンクラゲと同じ箱型のクラゲですが傘の大きさは10~15㎝で多量の触手がありその長さは1.5mほどにもなります。
泳ぎも得意で小魚を求めてスイスイと泳ぎ回ります。
名前は毒蛇の「ハブ」から来ていますが、実際はハブよりも何十倍も強い毒性だと言われています。
刺されると激痛を感じ患部はミミズ腫れになりその後、水疱、細胞壊死を起こします。
重症の場合、意識を失ったり、呼吸困難、また心肺停止に陥ることもあります。
過去には死亡例も出ている日本でもっとも危険なクラゲです。
本土のサーファーでも、サーフトリップなどで行った時には注意が必要です。
クラゲに刺された場合の対処法
①真水で洗う
基本的にどのようなクラゲに刺された場合でもまずは海から上がり 真水ではなく海水で患部を優しく洗いましょう。
真水は浸透圧の影響で刺胞を刺激してしまい毒針が発射されたり、毒が周り状態が悪化する可能性があります。
②棘や触手の除去
患部に触手が残っている場合は直接素手で取らずにタオルなどで取り除いてください。
③患部を冷やすor温める
クラゲの毒は40℃以上の熱に弱く、患部を温めることで痛みが軽減されます。
また、冷やして血管を収縮させることでも痛みが和らぎます。
冷やすのも温めるのもクラゲに刺された処置としては効果的です。
ただし火傷や凍傷には注意してください。
また傷みが取れなかったり、腫れが引かないといった場合も、出来るだけ早く皮膚科で診てもらうことをおすすめします。
カツオノエボシやハブクラゲなどの危険なクラゲは、重症の場合意識を失ったり、呼吸困難、また心肺停止に陥ることもあります。
また、過去にクラゲに複数回刺されたことがある場合は、アナフィラキシーショックを起こす可能性もあります。
刺された場所以外での痒み、腹痛や嘔吐、呼吸困難などの症状や、具合の悪さを感じられたら躊躇せずに救急車を呼びましょう。
クラゲの予防策
クラゲの予防は極力肌を露出しないことです。
フルスーツを着用するか、スパッツや肌に密着する長袖ラッシュガードでも予防できます。
クラゲ除けローションも発売されているので、試してみてもよいかもしれませんね。
夏場のビーチには、クラゲが打ち上げられているのを見かけることがあります。
死骸であっても触手は刺胞を発射するクラゲもいます。死んでいるからと言って安易に触れないように気をつけてください。
アカエイ
危険度 ★★★★☆
最近、ビーチのインサイドで刺されるといった事故が多くなってきているアカエイの被害。
アカエイはビーチブレイクポイントのインサイドの砂に潜んでいることがあります。
アカエイの尾には毒針があり、海に歩いて入って行く際に刺されることが多いようです。
さらにその針には返しがあり傷口をひろげてしまうのが恐ろしいところです。
刺されると激痛が走り、傷みが数週間続くことがあります。
筆者の知り合いも被害に遭い刺された患部を見させてもらったことがあります。
皮膚に穴が空いているような、痛々しい症状になっていました。
サーフィンが出来ないほど長引いたようです。
アカエイに刺された時の対処方法
アカエイに刺されると、重症の場合、死に至ったり、刺された患部を切断しなかればならないほど危険なことがあります。
刺されてしまった場合は速やかに海から上がり、お湯で患部を洗い、すぐに病院に行った方が賢明です。
アカエイの予防方法
海に入る時に気をつけたいところなのですが、砂に同化して目視しにくいのが実情。
浅瀬の泥や砂地を好むのことを覚えておきましょう。河口のポイントは要注意です。
アカエイの被害情報を得られたポイントでは出来るだけ足をつけずにパドリングでに入るといった予防策しかないですよね。
ヒョウモンダコ
危険度 ★★★★☆
近年ニュースでも取り上げられ注意喚起されていた、『殺人ダコ』の異名を持つ危険生物です。
元々小笠原諸島や南西諸島以南、太平洋の熱帯域や亜熱帯域に生息していた小型のタコなのですが、水温上昇により太平洋側の各地で発見されるようになって来たとのこと。
関東でも目撃されています。
リーフポイントの岩場に生息していて、ヒョウ柄のような模様をしているからヒョウモンダコと呼ばれます。
体長は10cm程度ですが、触れると噛みつかれることもあるようです。
唾液にはフグと同じ神経毒のテトドロトキシンが含まれ、唾液を吐きだしたり、噛みつかれた際に注入されてしまいます。
テトロドトキシン毒の主な症状は、麻痺、呼吸困難、嘔吐。
テトロドトキシンは経口摂取した場合の致死量は1-2㎎。その毒性は青酸カリの850倍の毒性といわれています。
怖いのがテトロドトキシン毒は解毒方法がないので、体内から排出されるのを待つしかありません。
ヒョウモンダコに刺された時の対処方法
過去にはオーストラリアやニュージーランドでヒョウモンダコに噛まれた死亡例も報告されています。
噛まれたらすぐに死に至るというわけではなく、個体によっては皮膚潰瘍程度で済みますが、もし噛まれた場合にはすぐに救急車を呼ぶか病院に行くことが賢明です。
ヒョウモンダコの対処方法
ヒョウモンダコから襲ってくることは無いので、見かけても絶対触ったりすることなく離れることが大切です。
磯やリーフで小さなタコを見かけたら、ヒョウモンダコを疑って近づかないようにしましょう。
サメ
危険度 ★★★★★
ハワイやオーストラリア、また南アフリカやインドネシアなど海外ではシャークアタックに関しての被害はよく耳にすると思います。
実際ハワイのサメに襲われ片腕を失ったベサニー・ハミルトンや、南アフリカのジェフリーズベイでの試合中にサメに襲われながら難を逃れたミック・ファニングなど、話題になった事例ですよね。
筆者もオーストラリアで波チェックの際に、ポイントの近くを泳ぐサメを見て恐怖を感じた経験があります。
日本ではあまり聞かなかったシャークアタックですが、最近では日本国内でもシャークアタックが発生し、サメの目撃情報も各地で報告されるようになってきました。
海水温の上昇によりサメの活動域が広がっていることが原因とされており、日本のサーファーにとってもシャークアタックは、海外だけのことではない不安要素になってきています。
シャークアタックの予防策
500種類ほどいるサメのほとんどは臆病な性格で、人を襲う可能性のあるサメはたったの10種程度です。
シャークアタックでの死亡は全世界で年間平均4人。これは雷に撃たれて亡くなる確率よりも低いと言われています。
とはいえ、襲われる可能性がある以上用心する必要があります。
とくに海の中から見たサーファーの姿はサメの好物のウミガメやアザラシに見えるといいます。サーファーにとってサメは脅威意外のなにものでもありません。
サメの予防策として以下のことに注意するとよいとされています。
- 光る金属を身に付けない
キラキラした金属は魚に見えるとか。 - 早朝や夕方を避ける
早朝や夕方はサメの活動時間。 - 流血していたら海に入らない
サメの臭覚は鋭い。でも何キロも先から血の臭いを嗅ぎ分けるってのはどうやらデマらしいですけどね。 - オシッコをしない
とにかくサメは臭いに反応する。 - サメが出没するポイントには入らない
未知のポイントでは情報収集が大事です - サメ対策グッズを使用する
効果のほどは定かではないですが、ないよりあった方が安心ですよね。
たとえ小さな人を襲わないサメでも、興味本位で噛まれただけでも鋭い歯で大怪我に繋がります。
もしもサメを見かけたら種類を問わず、慌てずバタバタせず、極力静かにサメから離れるようにして速やかに海から上がりましょう。
もしサメが向かってきたら
ミック・ファニングは鼻っ面を殴り回避したのは有名な話です。
サメは神経が集中している目や鼻っ面を殴ると、怯んで攻撃してくるのを止めるといいます。
でも通常はパニックで、そんな余裕はまずないでしょうね。
もしサメに噛まれたら
サメに噛まれたら致命的なダメージを受けるので、その後の応急処置が命運を分けます。
被害のケースにより対処法は異なるでしょうが、即救急車を呼びその間リーシュコードやタオルなどで縛り止血を行いことでしょう。
まとめ
サーファーにとっての海の危険生物について書いてみました。
海の中は透き通っていなければ見えないので、中々気をつけるといっても難しいですよね。
最低限、知識と対処方法を知っていれば、不安や心配なくサーフィンを楽しめると思いますよ。
「クラゲに刺されたらお酢をかけると良い」と言いますが、これはアンドンクラゲやハブクラゲなどの箱型のクラゲに対しては刺胞の発射を抑制してくれるので、処置早期の段階でのお酢は効果的です。
ただし、カツオノエボシやアカクラゲなどには刺胞を刺激してしまい逆効果となります。
クラゲの種類が明確でない場合はお酢はやめた方がよいでしょう。