先週、友人Tと会っていた時のことです。
Tとはこれまでの人生の中でもっとも楽しかったであろう時期を共に過ごしてきた古くからの友人で、私が14年前サーフィンを嗜んでいた頃の波乗り仲間でもあります。
彼もまた私と同じく県外からの出戻り組です。
帰り際、駐車場まで見送る時にTの車を初めて目にしました。
どうやら黒の軽ワゴンに乗っているようです。
車内を覗くと後ろにはサーフボードにポリタンク、リーシュや濡れたウェットをいれるプラスチックの衣装ケース、絶対1週間以上は洗ってないであろう汚いバスタオル、スケボーや雑誌などが乱雑に放り込まれています。
私「あれ?お前波乗りいってるの?」
T「昨年宮崎に帰ってきてからしばらくして道具揃えていってるわ」
Tとはたまに会っているのですが、サーフィンをしていたことには気が付きませんでした。
羨ましさと先を越されたような嫉妬に近い感情が湧き上がります。
東京から帰省して3年。せっかく宮崎にいるのだしサーフィンを再開させたいという気持ちはずっと持っていました。
夏が近づくたびに「今年こそは」と考えるのですが、私も40前のいいオッサン。今更感もあります。
サーフボードやウェットスーツなどの初期費用も考えるとなかなか行動に移すまでには至りませんでした。
しかし、Tの波乗り再開を知って私の中で何かが吹っ切れました。
私「まじで!?俺も連れて行ってよ!」
Tが波乗りに行くときにボードを借りて便乗しよう。
だらしない体をなんとかしたいというちょっとしたダイエット感覚です。
それから約一週間後の今日。
午前6:30 木崎浜
ついに波乗りカムバックの時を迎えました。
爽やかな青空が頭上に広がっています。
車を降り二人で並んで波をチェックします。
波のサイズは膝くらいでしょうか。
私「波ないねー」
T「うーん、ないねー」
まるで波が無いのが残念なことのように言いいます。
しかし実際は小さくて安堵しています。
さすがに14年のブランク、まともにパドルすることもできずに亀のように海面をジタバタすることくらいしかできないでしょう。
ゲティングアウトできるか不安でしたが、このサイズは私の復帰にはうってつけです。
まるで私の再開を祝福するかのような天候と波の状態に感じます。
海も空も変わらない。
なんとも言えない懐かしい感覚が蘇ります。
まるで若い頃にタイムスリップしたような感覚です。
14年前波乗りをしていたことがつい最近の事のように感じられます。
変わったのは私もTも歳を取ったということ。
二人して自虐ネタを披露するかのように厚く脂肪が乗り出てきた太鼓腹を自慢げに見せ合いながらサーフパンツに着替えます。
着替えている最中、Tが私を呼びます。
T「おっさん、見てん!」
振り返ると、こともあろうかTは自分の黒々とした出来の悪い息子を私に見せてきました。
T「どうよ?こっちも歳とったぞ」
私「うわぁっ!きたねっ!見せんな!」
まるで子供です。
私とTの精神年齢はすっかりあの頃に戻っています。
とは言えたんなるオッサン。
下品にふざけ合うオッサン二人はキモイ意外のなにものでもないでしょう。
さすがに生白くぶよぶよと締りのないお腹をさらして波乗りするわけにはいきません。
私は近場のスポーツ用品店で、2000円くらいのどこの物かもわからないラッシュガードを購入しました。
サーフボードはTのサブである6’10(約184cm)を借りることに。だいぶ細いです。
心の声「これ乗れるかな。。。」
裏側にはTが自ら書いたタトゥーの筋彫り状態のようなアウトラインだけのイラストが大きく描かれています。
素人が書いたとは思えない出来の良い絵ですがちょっと恥ずかしい。。。
借りる身分で贅沢は言ってられません。
ちなみに私が昔使っていたサーフボードはどうやら実家の倉庫に2本眠っているようです。
雑に扱われどこかしら壊れていることでしょう。
それ以前に見栄をはった腕に見合わないペラッペラのボードです。
ガリガリだった当時から10kg以上太っている今の私には到底乗れる代物ではないのは間違いありません。
見に行く気も起こりませんでした。
着替えをすませワックスアップ。
サーフィンをするための一つ一つの行動が懐かしくボードにワックスを塗るゴリゴリという音すらも心地よく感じます。
さぁ準備が整いいざ出陣です!
見れば足が付きそうなところで波はブレイクしているようです。
歩けるところまで歩き、進みにくくなったところで押し寄せて来るスープの上にボードを放り投げそのままボードに覆いかぶさるように飛び乗ります。
「おぉ?」
板にうつ伏せるると思ったより安定できています。
心の声「意外といけるかも?」
そう思ったのもつかぬ間でした。
胸を反ってパドリングします。
心の声「こんな進まないものだっけ??」
ふらつきはしなかったものの全然進んでいる気がしません。
小さいながらうねりから壊れた白波がザワザワと目の前に迫ってきます。
心の声「ドルフィンスルーしなきゃ」
レールを握ってノーズを沈める。
片方の膝とつま先でボードを抑え、もう片方の足を伸ばし体重を掛ける。
ドルフィンスルーのやり方は体が覚えているようだ。
しかし
「ふがふがふが!」
全然潜れていないのでしょう。
スープに押されてバランスを崩してボードから落とされてしまいます。
あらためて板に腹ばいになり全力パドルで波がブレイクするラインをやりすごします。
「ぜぇぜぇ。。。やっとでれた。。。。」
アウトは岸からすぐそこです。しかもほとんど歩いていける。
ほんの数メートルしかパドルする必要はないのにラインナップに着いたころには息が上がり腕はパンパンです。
「ぜぇぜぇ・・・はぁはぁ・・・死ぬ」
体力のなさには自信があります。
しかしこれほどとは。。。
想像以上の体力のなさにびっくりです。
それもそのはずです。
普段の私はほとんど動きません。
朝事務所に車で出勤し、パソコンに向かったら帰るまでほとんど動きませんトイレと冷蔵庫に飲み物を取りにいくくらい。
さらに地方ではちょっとそこまでも車で移動します。
私の自宅から事務所まではほんの数百メートルです。
東京でいえば自宅マンションから最寄り駅に歩くくらいの距離です。そんな距離を車でいくんです。
話がそれてしまいました。戻します。
体力を回復させるためにボードにまたがって波を待つふりをします。
でも実際は体力回復の休憩。
波待ちの体勢は猫背になってボードにしがみつくような格好にはなってないようです。
でもフラフラします。
ちょっと気を緩めると横に転覆しそうになります。
体力も十分回復し波にトライしてみることに。
うねりが近づいてくる。
ボードを岸に向けようとするも、バランスを崩しそうになる。
大回りな方向転換を行う。
岸に向いたときにはすぐ後ろまでうねりは近づいてきている。
思いっきりパドルするも2、3漕ぎで腕があがらなくなる。
無情にも波は私を通りこしていく。
何度かトライするもまったくもって乗れる気がしません。
しかも一度トライすると腕の筋肉と体力を使い果たし、しばらく回復するまで動けません。
T「パドルの姿勢は以前と変わらないねー。でもボードの取り回しがめちゃくちゃおせーwww」
私の方向転換がトロいことが可笑しいようです。
次はクイックな方向転換を試みます。
うねりが近づいてくる。
岸に向けてすばやく方向転換をしようとする。
転覆しそうになり、体勢を立て直すもすでに手遅れ状態に。。。
そもそも方向転換しているだけで腕の力を使い果たしてしまいます。
まったくもって波を捉えることができないまま1時間半が経とうとしています。
じりじりと肩や腕の筋肉が悲鳴をあげて、すでに筋肉痛状態です。
そろそろ上がらないと仕事に間に合いません。
結局一本も乗ることなくパドリングだけでサーフィン復帰初日は終わってしまいました。
想定内、想定内。予想した通りの結果です。
もしかしたら案外乗れるかもと多少淡い期待はありましたが、やはりそう甘いものではありませんでした。
何もできませんでしたが、波乗りを再開したという事実だけで満足感に満たされます。
太陽は高く昇り日差しの照りつける澄み切った空がすがすがしい気持ちをさらに助長します。
帰り道、プールで泳いだ後と同じふわふわとした脱力感に包まれながら、パームヤシが沿道に立ち並ぶ220号線を窓全開で走らせます。
なんとも言えないこの感覚がたまらなく心地よい。
明日また同じ時間に行くことをTと約束し、軽ワゴンが走り去るのを見送ります。
その日、一日のエネルギーを使い果たしほとんど仕事にならなかった事は言うまでもありません。
今日の気づき
・波に乗る以前の問題で話にならん。とにかくパドル力と体力をつけないと!
・意外とパドルの姿勢はまともだったらしい
65歳からサーフィン始めて初心者なりにハマっています。 愛読していますので、最近更新が無いのが寂しいです。
柏木様
コメントありがとうございます!コメントにレスしていなかったみたいで遅くなりましたが・・・すいません!
子どもが生まれ仕事を頑張らなくてはいけなくなったため更新が滞っております><
でもサーフィンはやめておりませんので、たまにチェックしにきてください!